予防医学のカギ「体内時計」とは

日本は今後「国民の3人に1人が高齢者」となる”超高齢社会”が予測されているため、病気にならないようにする”予防医学“への取り組みが大切になります。

私たちの体には、1日周期でリズムをきざむ「体内時計」が備わっています。

この「体内時計」が乱れると、様々な不調につながります。

体内時計の乱れは”万病の元”と言えるでしょう。

体内時計とは

1729年にフランスの天文学者ジャン・ジャックが、オジギソウを光の当たらない場所に置いても「昼夜のリズム」に合わせて、葉を開閉させていることに気が付き研究されるようになりました。

生物には、太陽の光以外にも1日のリズムを知る仕組みがあるのではと推測しました。

その後、1970年代には、ベンザー博士とコノプカ博士による「ショウジョウバエの実験」で、体内時計に関係する遺伝子が存在することがわかるようになったのです。

この遺伝子が「時計遺伝子」なのです。

2017年には「体内時計の分子生理学的仕組み」でノーベル医学・生理学賞で3人が受賞しました。

(アメリカブランダイス大学のジェフリー・ホール名誉教授・マイケル・ロスバシュ教授とアメリカロックフェラー大学のマイケル・ヤング教授)

体内時計はどこにあるの?

私たちの体は、約60兆個の細胞で構成されていますが、生殖細胞を除く全ての細胞ひとつひとつが体内時計を持っています。

しかも、各細胞の時計はばらばらに機能するのではなく、体内時計の中枢からの信号を受け取り機能しています

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一般に、体内時計は視交叉上核(しこうさじょうかく)を指す場合が多いです

体内時計は3種類

体内時計は「中枢時計」「末梢時計」「細胞内時計」の3種類が存在します。

中枢時計を中心とした指示系統で、体内時計はコントロールされています。

▼中枢時計

中枢時計は、脳の中でも中枢である視床下部の「視交叉上核」と呼ばれる一部の領域に存在します。この部位が中心となって、末梢時計や細胞内時計の時刻調整を行います。

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中枢時計は光刺激に影響を受けます

▼抹消時計

抹消時計は、中枢時計の調整を受けてそれぞれ異なるリズムを刻みます。成長ホルモンは夜間に多く分泌される・体温は夕方にピークを迎えることなどが挙げられます。

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抹消時計は、食事や運動など光以外の要因の影響も受けます

「中枢時計」と「末梢時計」のリズムが、異なる二重構造になると「高血圧・糖尿病・うつ病」などになりやすくなると言われています。

▼細胞内時計

テロメアは、染色体の末端にあり細胞分裂を重ねるごとに短くなります。細胞が分裂する毎に、まるで「ロウソクのように少しずつ短くなる」事で”命のローソク“と呼ばれたりします。

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体内時計の乱れは万病の元!

体内時計は、時計遺伝子によって生み出されます。

体内時計は「血圧・体温・ホルモンの分泌・睡眠覚醒サイクル・免疫反応など様々なコントロールを行なっています。

細胞にも時計遺伝子は存在して、細胞周期のコントロールや傷ついたDNAの修復に関与しています。

体内時計は、「光・睡眠・食事」などに影響を受けます。

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特に、光の刺激の影響は大きいです

体内時計の乱れが引き起こす症状

  • 肥満
  • 睡眠不足
  • 糖尿病
  • 高血圧
  • 心筋梗塞
  • 脳梗塞
  • 精神疾患

体内時計は、遺伝子レベルで設定されています。これに逆らった生活は、不調を引き起こすため万病の元と言われているのです。

体内時計が乱れる原因

  • 夜更かし
  • ストレス
  • 運動不足
  • 不規則な勤務シフト

このようなことからも、体内時計と日常生活のリズムを一致させることが「病気の予防」に重要と位置付けています。

体内時計を整える

健康を維持するためには、規則正しい睡眠サイクルと十分な睡眠を取る必要があります。米国立睡眠財団(NSF)によると、睡眠時間は成人で7~9時間が推奨されています。

体内時計のリセットは、朝に明るい光を浴びて脳内伝達物質の「セロトニン」を分泌させることが大切です。明るい光を浴びるために、規則正しい時刻に起きる生活をしましょう!

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休日も同じ時刻に起床することが望ましいです

健康において「規則正しい生活」が重要なことは誰でも知っていると思います。しかし、ライフスタイルの変化に逆行して、規則正しい生活を維持することは難しい人もいます。

まずは、各々のライフスタイルの中で「光・睡眠・食事」の見直しを行いましょう。

そして、体内時計のサイクルに合わせた生活を心がけてみてはいかがでしょうか。